最近の解決事例
テオリアの裁判例
テオリアは、過去に多くの労働事件を取り扱ってきました。この中でも特に争点の判断が難しい事件について、テオリアの裁判例としてご紹介します。
固定残業代が無効であると判断された事例① マーケティングインフォメーション事件
Aさんは営業職として勤務していましたが、営業手当を固定残業代とする旨が就業規則に明記され労働条件通知書にも記載されていたため、労働時間に応じた残業代は一切支給されてきませんでした。しかし、Aさんの基本給は24万円であるのに対し固定残業代は18万円(残業100時間分)であったため、当事務所ではおよそ100時間もの長時間の残業を前提した固定残業代制度は無効であると主張して裁判所に提訴しました。
第1審判決
横浜地方裁判所 2014年4月30日
裁判所の判断:Aさんの敗訴
就業規則及び労働条件通知書に明記があるため固定残業代は有効であると判断し、Aさんの残業代は営業手当では足りない部分だけであり未払いは約1万円であるとの判断を下しました。
第2審判決
東京高等裁判所 2014年11月26日
裁判所の判断:Aさんの逆転勝訴
36協定で定める月45時間を超える残業を行うことを前提とした労働契約は、公序良俗に反するため固定残業代は無効であると判断し、Aさんの逆転勝訴の判断を下しました。会社は上告せず判決は確定し、Aさんは遅延損害金等を含めて約820万円を回収しました。
事件担当者
弁護士 松村 龍一
弁護士 大平 雄介(当事務所から独立:OLC法律事務所 http://olc-law.com)
ここがポイント!
36協定で定める月45時間を超える固定残業代は、公序良俗に反するため無効と判断された。
固定残業代が無効であると判断された事例②
AさんとBさんは販売職として勤務していましたが、基本給の3割を固定残業代とする旨が就業規則に明記され雇用契約書にも記載されていたため労働時間に応じた残業代は一切支給されてきませんでした。
しかし、この会社では就業規則により職種や仕事内容にかかわらず全従業員一律の固定残業代制度を定めていたこと、明らかに固定残業代よりも多く残業を行っているにもかかわらず差額が支給された形跡が全くないこと等を理由に、会社の固定残業代制度は実質的に時間外労働の対価としての性格を有していないため無効であると主張して裁判所に提訴しました。
第1審判決
東京地方裁判所 2014年8月26日
裁判所の判断:AさんとBさんの勝訴
裁判所は、当事務所の主張を全面的に受け入れて、会社の固定残業代は実質的に時間外労働の対価としての性格を有していないと判断し、Aさんの未払賃金等は約250万円、Bさんの未払賃金等は約300万円と判断を下しました。本件はその後東京高裁で和解しました。
事件担当者
弁護士 松村 龍一
ここがポイント!
固定残業代制は、時間外労働の対価としての性格を実質的に有していることが必要であると判断された。
仕事内容に応じて固定残業代が定められているか、実際の残業時間に基づく残業代との差額が支給されているか、などの事情が考慮された。
固定残業代が無効であると判断された事例③ 際コーポレーション事件
Aさんは飲食店で店長として勤務していて、基本給とは別に支給される役職手当の一部が固定残業代であると定められていましたが、実際に労働時間に応じた残業代は一切支払われていませんでした。そのため、Aさんが残業代を請求したものの、会社は仮に支払義務があるとしても固定残業代と実際の残業代との差額だけを支払うと主張してきました。
そこで、当事務所では、会社の残業代が実質的には時間外労働の対価としての性格を有していないこと、実際の残業代と固定残業代との差額を精算することが明確に定まっていないこと等を理由に固定残業代は無効であると主張して裁判所に提訴しました。
第1審判決
東京地方裁判所 2014年3月27日
裁判所の判断:Aさんの勝訴
裁判所は当事務所の主張を全面的に受け入れて、実際の残業代と固定残業代との差額を精算することを明確にしなければ固定残業代は有効にはならないと判断し、これを怠っていた会社に対し未払賃金等として約600万円の支払いを命じる判断を下しました。
本件は会社が控訴したものの控訴判決前に控訴を取り下げたため、第一審判決が確定し遅延損害金、付加金等を含めて約1050万円を回収しました。
事件担当者
弁護士 松村 龍一
弁護士 若月彰
ここがポイント!
実際の残業代と固定残業代との差額を精算することを明確にしなければ固定残業代は有効にはならないと判断された。
固定残業代が無効であると判断された事例④ カンティーヌドール事件
Aさんは飲食店で勤務していましたが、基本給として18万円に加えて職能時間外手当として78時間の残業代に相当する9万円(増額後は92時間の残業代に相当する12万円)が支給されており、労働時間に応じた残業代は一切支給されてきませんでした。
しかし、この会社で職能時間外手当を超える残業が多かったにもかかわらず一度も差額が精算されていないこと、36協定で定める月45時間を超える残業を前提とする固定残業代は無効であること等を理由に、会社の固定残業代制度は実質的に時間外労働の対価としての性格を有していないため無効であると主張して裁判所に提訴しました。
第1審判決
東京地方裁判所 2016年2月17日
裁判所の判断:Aさんの勝訴
裁判所は当事務所の主張を全面的に受け入れて、会社の固定残業代は36協定の上限を上回ることを前提としているもので、実質的に時間外労働の対価としての性格を有していないと判断し、Aさんの未払賃金等として約500万円、付加金として約400万円の合計約900万円を支払うように判断を下しました。
事件担当者
弁護士 松田ひとみ
ここがポイント!
固定残業代制は実質的に時間外労働の対価としての性格を有していることが必要であり、36協定で定める月45時間を超える固定残業代は実質的に時間外労働の対価性を有していないと判断された。