退職時の清算条項にサインしたが残業代100万円回収した事例

依頼者はSEとして勤務しており、長時間の残業が常態化していました。依頼者は心身ともに疲弊していたため、何としてでも退職したいと考えていました。
そこで、会社に退職したい旨を申し出たところ、最後の給与と引換えに時間外手当などの債権債務が一切ないことを確認するという清算条項が記載された書面に署名押印するよう求めました。依頼者は退職したいという思いが強かったため、それでも退職できるのならという藁にもすがる思いで書面にサインしてしまい、退職しました。

その後、依頼者は退職後落ち着いて考えてみると、あれだけ長時間働いて会社に貢献してきたのだから、働いた分の対価は貰って当然だと思うようになりました。しかし、退職時にサインした書面の存在が気になったため、テオリアに相談することにしました。

テオリアは、今回の事案では清算条項の書面は有効な証拠とはならないと判断し、まずは会社に対し交渉で残業代を請求することにしましたが、会社側は書面の存在を理由に一切の支払いを拒否しました。

そこで,労働審判を申立て、書面の有効性を中心に争いました。すなわち、既に発生している賃金を放棄する場合は、労働者の意志が真意に基づくことが必要であるのですが、今回の事案は依頼者は本当に賃金を放棄したいと考えていたとは言えない、と主張したのです。

労働審判では,会社が書面の内容を詳細に説明することなく,手続として必要であるとだけ述べて作成させていたことや、依頼者が心身ともに疲弊し何としてでも退職したいと考えていた等の事情を踏まえると、到底依頼者が賃金を放棄したいと考えていたとは言えないとして、書面は無効であると判断されました。その結果、依頼者の残業代として100万円を回収することが出来ました。